理系大学生・大学院生によるサイエンスのおはなし

リバコミ!
Jun
15

大家族で暮らす小さな侵略者

こんにちは!磯貝です。

5月28日に行なわれたリバネスアメリカ実験教室にスタッフとして参加し,1週間ほどカリフォルニアに滞在してきました!

初めて見るさまざまなものに驚き,感動しました。
広い土地,きれいな海,お店の料理についてくる膨大な量のポテト・・・
そして,お世話になったお宅のキッチンを襲撃する,小さなアリの行列!!

とても身近なところにいるアリですが,改めて調べてみると,体は小さいながらも実はすごい力を持っていることがわかりました!
■家族の住む“家”はキロメートル単位の大きさ

アリは,女王アリ,働きアリ,兵隊アリ,オスアリなど,いくつかの階級のアリからなるコロニーを生活単位としています。
単女王制のアリでは,新女王が新しい巣をつくるとそれは別のコロニーになりますが,ひとつのコロニーに複数の女王アリがいる多女王制では,新女王アリはオリジナルの巣の近くで新しい巣をつくり,その両方の巣は接続していて,しばしば働きアリが行き交います。

このような分巣によって,コロニーはわたしたちの想像以上に拡大していきます。
わたしがカリフォルニアで見たアルゼンチンアリも多女王制のアリで,非常に大きなコロニーを形成します。
これまでに発見されているアルゼンチンアリのコロニーで最も大きいものは,イタリア,フランス,スペインおよびポルトガルの海岸線に沿って6,000キロメートル以上!に拡がっているという報告があります。

まさに,大家族なのです。


■家族を見分ける方法とは?

ところで,アリは異なるコロニーのアリを激しく攻撃することがすでに知られています。
では,どのようにして同じコロニーの仲間とそれ以外のアリを識別しているのでしょうか。

アリは,出会った相手の認識を,視覚ではなく触覚による接触で行なっています。
出会った相手の体表に存在する不揮発性の化学物質を触覚で認識し,判断しているのです。
この化学物質は種によって組成が異なり,それが種を識別するシグナルになっていると考えられています。
では,同種のアリにおけるコロニーの違いは,何をもとに判断されているのでしょうか。

それは,やはり体表の化学物質でした。
アリたちが体表にまとう化学物質は,コロニーごとにも組成比が異なり,それを触覚で識別しているのです。
そして,その化学物質は,女王アリが発する物質がもととなり,グルーミング(自分や相手の体を舐めて身づくろいすること)によって働きアリに均一にいき渡ることにより,同じコロニーのアリすべてが同一の化学物質をまとうことができるのです。

2匹のアルゼンチンアリ(働きアリ)をガラス容器の中に入れたとき,異なるコロニーのアリ同士は激しく攻撃しあったのに対し、同じコロニーのアリは,遠く離れたところから連れてきたにもかかわらず,互いに積極的に攻撃しなかった,という実験結果もあります。
コロニーがどんなに大きくても,お互いがまとっている化学物質を認識することによって,仲間を識別することができるのです!


■日本でも勢力拡大!

アルゼンチンアリに関わらずアリは同じコロニーのメンバーを認識し,異なるコロニーのアリとはテリトリーを争って戦います。

その競争力・攻撃性が非常に高く,侵入した各地域においてその地域の在来のアリを次々に駆逐して置き換わるために,侵略種として問題視されているものもあります。

アルゼンチンアリも侵略種のひとつで,実は,日本でもこのアルゼンチンアリの侵略が始まっていました!
平成17年の外来外来生物法の施行と同時に,生態系に被害を及ぼす外来生物として特定外来生物に指定されています。

最初に日本でアルゼンチンアリが発見されたのは,広島県廿日市(はつかいち)市。
1993年に報告されています。
アルゼンチンアリは,放浪アリと呼ばれる種類のアリで,物資や人の移動に便乗して分布を広げていきます。
廿日市市にも,港に荷揚げされた資材に紛れてやって来たのではないかといわれています。
さらに,現在では,兵庫県(1999年),山口県(2001年),愛知県(2006年),神奈川県(2007年),岐阜県(2007年)と,確実に侵略が進んでいます。
みなさんの住んでいるところにも,気づかないうちにアルゼンチンアリがやって来るかもしれませんね。
しかし,アメリカ南東部では,侵入地域の大部分においてアルゼンチンアリがヒアリという別の侵略種によって取って代わられてしまったようです。
日本には,このヒアリと同属であるトフシアリが生息しており,日本に定着したアルゼンチンアリも,いつの日か取って代わられるかもしれません。


そういえば,日本に帰ってきてからアリを見ていない,ということに気づきました。
今週末,改めてアリの行列をじっくり見てみようと思います。


<参考>
環境省 自然環境局 外来生物法
広島県 廿日市市 アルゼンチンアリ
Genome News Network
Aggression studies reveal the existence of ant supercolonies

STANFORD NEWS SERVICE
NEWS RELEASE: Scientists question reports of massive ant supercolonies in California and Europe

国立■環境研究所 侵入生物ータベース 昆虫類
■山岡 亮平:アリはなぜ一列に歩くか,大修館書店(1995)
■松本 忠夫:社会性昆虫の生態 シロアリとアリの生物学,培風館(1983)



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