理系大学生・大学院生によるサイエンスのおはなし

リバコミ!
Nov
16

この世界をつくる粒と波のお話・・・量子論 [前編]

 こんにちは。リバネスの垣田です。
 秋の夜長、もの思いにふけるにはよい季節ですね。

 突然ですが、みなさん、『物理』と聞いてどんな学問を思い浮かべますか?
 力を矢印で表したり、台車を坂道で走らせてみたり…。ゆらゆら揺れる振り子を思い浮かべる人もいるかもしれません。

 でも、これらは物理学のほんの一部です。
 相対性理論と並ぶ現代物理の華、量子論と呼ばれる分野では、バイオでおなじみの細胞やDNAよりももっともっと小さな世界も取り扱います。
 そこには、人類の想像力を超えた、感覚では到底理解できない摩訶不思議な世界がひろがっているのです。しかもその理論は、現代の科学技術の基礎として、私たちの社会を支えているのです。

 今回はそんなロマンあふれる量子論の、でもなかなか理解しがたいトピックスを、ほんのちょこっとだけ紹介したいと思います。

 虫の音でも聞きつつ、頭をやわらかーくして、お楽しみいただければと思います。

■ この世界の成り立ち1・・・小さな『粒』
 私たちが住んでいるこの世界は、一体何によって作られているのでしょうか。

 たとえば私たちの体。筋肉や骨、皮膚などからできています。
 これらは細胞によって構成されていて、その中には核やDNAがあります。さらに細かく見ていくと、それらは分子や原子というとても小さな物質の『粒』によって作られています。
ここまでは、学校の授業などで習った方も多いのではないでしょうか。

 この原子、実はさらに構造があります。原子の中心には原子核があり、その周りに電子が存在しているのです。
しかし、手のひらをどんなにじーっと眺めても、原子も原子核も電子も、目で見ることはできません。
原子の大きさ(=電子の軌道半径)はおよそ0.0000000001m、原子核の大きさは0.000000000000001mという小ささだからです。…といっても、0が並ぶばかりで、一体どのくらいの小ささなのか想像もできませんね。


 例えば、原子を1mmの大きさまで拡大した場合、ゴマ粒は富士山よりも大きくなってしまいます。
原子核になると、この原子よりもさらに小さくなります。原子を今度は東京ドームの大きさに拡大してみましょう。すると、原子核はマウンドに置いたパチンコ玉くらいの大きさになり、ドームのふちのあたりに電子が存在していることになります。
電子の大きさはきちんと分かっていないのですが、原子核よりももっと小さなサイズです。

小さな小さなスケールで見ると、この世界はスカスカなのですね。


■ この世界の成り立ち2・・・『波』
 さて、この世界が電子など、とても小さな物質の『粒』から出来ていることはお分かりいただけたと思います。
でもこの世界には、『粒』の他にもうひとつ、大切なものがあります。
それが『波』です。

 まず、波とは何かというと、『「量」の変化が空間を伝わっていく現象』を指します。
これだけではちょっと分かりづらいので海の波を例にあげると、「水面の高さ」という「量」の変化が伝わっていく現象、ということになります。
つまり、下の図でいう縦軸(=波の高さ)が水面の高さ、横軸が水平方向の位置に対応します。



 光や電波なども電磁波という『波』の仲間です。
(電磁波の場合の縦軸は、「電場・磁場の強さ」という「量」です)
(波の山と谷ひとつずつ分の長さを波長といいますが、その波長が可視光と電波では異なっています。)

 波は、特有の性質を持っています。波特有の性質とは、ここでは主に「回折」と「干渉」というものをさします。
例えば、蛍光灯の下に板をかざしたとき、その下は全くの暗黒にはならず、回りこんでくる光でいくらかは明るくなります。
このように波が回り込む現象を「回折」といい、波のもつ重要な性質のひとつです。

 また「干渉」とは、複数の波が重なった場合に、波の山と山・谷と谷は強めあい、山どうし・谷どうしは弱めあうことをさしています。

 粒の場合、このような「回折」や「干渉」は起きません。たとえば壁のわきを通るようにボールを投げても、ボールが壁の裏側に回り込む・・・なんてことは起きないのと似ています。

 光はこのような波特有の性質を持っているため、光(=電磁波)は『波』であるといえるのです。

■ 粒か波か、それが問題だ!?
 さあ、ここからが本題です。

 ここまでで述べたこと、この世界は『粒』と『波』からできている・・・実はこれは正確ではありません。

 先に述べた原子や原子核、電子といった、とっても小さなスケールで見ると、物質も光も、『粒』の性質と『波』の性質、両方をあわせもっているのです(=二重性といいます)。

 この『光や物質は、粒でもあり波でもある』という理論が冒頭で触れた『量子論』です。『量子』とは、この「粒でもあり波でもある」ものをさす言葉です。
例えば、最初に述べた原子の構造。
地球のまわりに月が回っているように、原子核のまわりに、電子が回っている絵を教科書などで見た方も多いと思います。
この絵は、あくまでも『粒』としての電子をあらわしたもので、電子はここにいる!と特定することができます。

 ところが実際には『量子』である電子は、居場所が粒のときのようにはっきりとはわかりません。
これを絵としてあらわすと、原子核を取り囲む軌道上に、ぼんやりと雲のように電子を描き表わすことになります。
「電子雲」と呼ばれるこの絵は、電子が粒のように、ある場所にぽつんと存在しているのではないことを表現しています。



 粒として表現したときの軌道(=電子の通り道)にあたる部分は、量子の場合は、電子が見つかる“確率が高い”場所です。
よって、軌道上の電子雲は「濃く」描き、軌道から離れるにつれて「薄く」描き表わします。
量子である電子がどこで見つかるかは、あくまでも確率としてしかわからないのです。

(量子論に関して「神様はさいころを振るか?」という話題がよく出るのは、この確率に関わる議論です)

 このような「存在場所が確率でしか表せない」という性質は、電子だけではなく光なども含めた量子の一般的な性質です。

 私たちの世界を構成する物質は、どこにあるかもはっきり分からない「量子」というぼんやりしたものでできている・・・
何となくイメージはついたでしょうか。
粒でも波でもあるなんて、やっぱり理解できないって?
でも、実験事実は確かに、その理解不能な事実を示しているのです。


 後編では、光や物質が「粒でもあり、かつ波でもある」ことを示す実験事実と、量子論が私たちの生活に役立てられている例を数例紹介したいと思います。

  『量子』であるゆえの、さらにびっくり!な、でも実は身近なところに利用されている現象や、かの有名なアインシュタイン博士のノーベル賞受賞の理由となった理論も登場します。

 次週、メルマガは休刊となりますが、サイエンストピックスは更新予定です。
もうちょっとだけ、お付き合いいただければうれしく思います。

つづく・・・


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コメント

筆者の垣田です。こんにちは。
読んでくださってありがとうございます!!

一点お知らせがあります。

■次回更新日の延期
本文最後に
『次週、メルマガは休刊となりますが、サイエンストピックスは更新予定』
と書きましたが、諸般の事情により、
再来週のメルマガ配信とともに更新することになりました。
ごめんなさい。

でもはりきって書いたので、ぜひまた読みに来てくださいね。

kakita - 22 Nov, 2007 - 23:44:49
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